映画 ひろしま の何がすごいのか?解説

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★★★★★ 当時者しか作れない、日本人が語り継ぐべき映画

映画 ひろしまの概要、あらすじ

1953年10月公開、映画は被爆した子どもたちの文集「原爆の子」(長田新編)が原作で、広島市出身の月丘夢路らが出演。原爆投下直後の混乱を、被爆者を含む約8万8000人のエキストラの市民が再現した。55年にベルリン国際映画祭長編映画賞を受賞したが、一部場面の削除を巡り製作側と折り合わなかった大手配給会社が国内で上映せず、「幻の映画」と呼ばれた。(毎日新聞Webより引用)

映画 ひろしまの何がすごいのか? ~戦後わずか9年で公開~

広島に原子爆弾が投下されたのは1945年8月6日。それからわずか9年で公開にこぎつけています。原爆をテーマにした映画はその後多く作られましたが、これほど当時の空気を閉じ込めた映画はないと言えます。

映画 ひろしまの何がすごいのか? ~最大の自主製作映画~

「原爆の日を再現する」という踏み込んだ内容のために、大手の映画会社の協力を受けておらず、日教組のカンパで制作をされています。松竹所属で広島出身のスター、月丘夢路さんはノーギャラで出演したとのこと。上の記事にもありますが、被爆者を含む約9万人がエキストラとして参加しており、小道具も一部実際に被爆者の私物が使われているそうです。

映画 ひろしまの何がすごいのか? ~あの日の描写~

映画は敗戦から8年後、被爆者の回想という形で原爆が落ちた日が再現されます。約40分間、建物に圧し潰された人、火事で逃げ遅れる婦人、行く当てもなくさまよう人、野戦病院の阿鼻叫喚など思わず目を背けてしまうような描写が続きます。あの日の後、原爆症の描写も執拗なまでに描かれます。

映画 ひろしまの何がすごいのか? ~単なる反戦映画ではない~

冒頭から、1953年の広島でも原爆が風化しつつあるというセリフで現代を生きる私たちは驚かせられますが、この映画の凄みはクライマックスにあります。被爆者の青年は働いていた工場を飛び出し被爆者の頭蓋骨をお土産としてアメリカ人に売ろうとして警察に捕まりますが(この時点で滅茶苦茶)、頭蓋骨に書いたメッセージが「人類の歴史上最初にして最大の栄光この頭上に輝く」というセリフ。とんでもない皮肉です。後の描写はちょっとお説教っぽいので好みではないのですが、このシーンは単なる反戦映画に留まらない痛快さがあります。

白黒映画で悲惨な描写が長く続くことから、とっつきにくいと思います。しかし全ての日本人は見て語り継いでいくべき作品です。

【23年8月 鑑賞】

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