映画 君たちはどう生きるか の感想【ネタバレあり】

★★★☆☆

★★★☆☆ 宮崎駿ワールドの集大成、そして敗北宣言

映画 君たちはどう生きるかの概要、あらすじ(若干ネタバレあり)

2023年7月14日公開、上映時間 125分。スタジオジブリ作品。公開前にキャスト、あらすじ、主題歌等を一切公開しない異例の宣伝手法で話題に。英題は「The Boy and the Heron」(少年とサギ)で若干ネタバレしている(笑)。一言で表すと、戦時中に田舎に疎開した少年(牧 眞人)が青サギに導かれて摩訶不思議な世界に飛び込むお話。

映画 君たちはどう生きるかのネタバレ感想

映画を見て初めて、悔しいという感情が湧きました。それは、損した、お金返せという意味ではなく、宮崎駿監督、およびスタジオジブリはもうとっくにトップランナーでなくなってしまっていたということに気づかされたからです。

映像表現、キャラクター造形について

前作「風立ちぬ」から10年、アニメの映像表現は進化し続けました。庵野秀明監督の「シン・エヴァ」や新海誠監督の「すずめの戸締り」、鬼滅の刃を手掛けたUfotableの作品群と比較すると、どうも画面にメリハリがありません。(スタジオカラー、Ufotableも制作に関わってはいるようですが)唯一おっ、と思ったのは冒頭の空襲のシーンで、眞人が炎に向かっていく躍動感は凄かったです。後はどこかで見たようなシーンばかり。眞人が迷い込む「メイドインアビス」的な謎の異世界も、どこか振り切れていない中途半端な印象を受けました。「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」の時点ではトップランナーだったスタジオジブリも、今は周回遅れとなってしまいました。

キャラクター造形についても、正直古さを感じてしまいました。青サギは言わずもがな不思議の国のアリスのマッドハッター、7人のおばあちゃん衆は、白雪姫の7人の小人のオマージュですし、眞人の母親、ヒミのデザインは和風白雪姫です。青サギとおばあちゃん衆のクリーチャー感のある造形とその他の普通の人たちの普通の造形がミスマッチで、物語のノイズになっていたような気がします。インコやフワフワしたやつ(名前忘れた)も普通で・・。本田雄さんが作画監督でしたが、キャラデザインはやってないよね?

ストーリーについて

全編、宮崎駿監督の自己投影と言っていい内容です。監督は戦時中に宇都宮へ疎開し、父親は航空機の部品を作る会社に勤めていました。眞人の生い立ちと重なります。父親の子を身ごもっている、かつ母親の妹である義母や学校に馴染めず、自傷行為に及んだところは脚色でしょうか。眞人が異世界に迷い込んでから会った、大叔父も監督の自己投影と考えられます。大叔父(監督)が世界を守る仕事を継がないか、と眞人(宮崎吾郎)に提案するも拒否され、最終的にインコの王様(他人)が塔を破壊するくだりは、現在のアニメ業界の縮図のようで、なんかなぁ・・。眞人の成長譚として見るにしても、キャラに血が通ってない(過去のジブリ作品もそうですが)。たぶん監督はもう発信したいメッセージがないんだと思います。

まとめ

本作は宮崎駿ワールドの集大成とあると共に、作家としての敗北、リタイア宣言だと感じました。万人にはオススメできません。以上!

【23年7月 鑑賞】

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